宮崎駿監督が制作した『ハウルの動く城』は2004年の発表から現在もなお人気の博する名作です。しかしながら、視聴者のなかにはストーリーがよくわからないと言う人たちもいるようです。
たしかに、映画の中では細かい設定の説明がありませんから、因果関係をつかめずに混乱しやすいかもしれません。改めて、視聴者のなかで作品の背景がわからずに「意味不明」と述べる人たちがいるのは、どうしてなのでしょうか?
この記事では、ハウルの動く城が意味がわからないと言われる理由を考察しています。宮崎駿監督が伝えたいこともまとめているので、参考にしてみてください。
ハウルの動く城が意味がわからないと言われる理由3選
さて、『ハウルの動く城』のストーリーについて「意味がわからない」と言われるのは、どうしてなのでしょうか?
一概には言えませんが、ここでは大きく3つの視点から理由を説明してきます。
理由1 戦争した背景がわからない
第1に、戦争が起こった背景についてよくわからないという人たちがいます。
たしかに、『ハウルの動く城』では、冒頭から戦闘機が空を駆け巡り、兵士が町中に蔓延っています。ソフィーがハウルと出会うことになったのも、18歳の若い姿で歩いていたときに2人の兵士に絡まれたことがきっかけでした。軍人の横暴さが垣間見えるシーンでもありますね。
そして、ハウルの元にも国王陛下から戦争に協力するよう依頼がきます。彼の師匠だったサリマンも国のために戦うことを強要してくるあたり、戦いは深刻化していると推定されます。ハウルは頑なに戦争への参加を拒否します。その結果、サリマンの手下たちがハウルやソフィーたちを狙ってやってくるのです。
そもそも、かつての弟子に対して戦争に協力しないという理由だけでここまでする訳もわかりませんし、戦争が起きたきっかけも語られることはありません。さらには、物語の終わりにサリマンがいきなり戦争を終わらせるのです。この唐突さは映画という限られた表現の中では仕方がないのかもしれません。
そのため、『ハウルの動く城』における戦争の位置付けがよくわからずに、ストーリーが理解できないという声があるわけです。
理由2 呪いが解けたかわからない
第2に、物語が進むたびにソフィーは徐々に若さを取り戻していくのですが、呪いが解けたのかどうかがよくわからないという問題もあります。
荒地の魔女がサリマンによって力を失った後でも、呪いは有効でした。もしかしたら、徐々に効果が失われていくのかもしれませんが、ソフィーにとって重大な問題だったはずの呪いがいつのまにか物語の中では扱われなくなっていくのです。
年老いたり、若返ったりするのを繰り返すのも意味がわかりませんよね。深読みすれば、ハウルを愛することに直向きになるソフィーは老いを受け止め、外見上の美しさに囚われることもなくなったから、自然と呪いに縛られなくなったのかもしれません。
理由3 心理描写がつかめない
第3に、『ハウルの動く城』の登場人物たちの心理描写が理解できずに意味がわからないと感じる人たちもいます。
例えば、ソフィーは荒地の魔女に呪いをかけられて若さを失ったにもかかわらず、サリマンによって本当の年齢に戻された彼女の面倒をみるようになります。通常ならば、憎しみの対象として恨んでも恨みきれないはずなのに、ソフィーはまるで何事もなかったかのように大切にするわけです。
もちろん、力を失った荒地の魔女を哀れんだことなのかもしれませんが、ソフィーの献身さを理解できずにモヤモヤする人もいるでしょう。
そのほかにも、ハウルがサリマンの軍勢を牽制した後、怪獣化したまま自宅の穴蔵で休んでいたときに、ソフィーに対して冷たい態度を取ったと思ったら、次の日は引越しだと別人のように振る舞うあたりも、テンションのアップダウンに疑問を持った方もいるのではないでしょうか。
このように、『ハウルの動く城』の登場人物は脈絡のない感情がぶちまけており、筋道を立てて考える視聴者にとっては納得がいかないわけです。
宮崎駿監督の伝えたいことは?
宮崎駿監督は『ハウルの動く城』を通じて何を伝えたかったのでしょうか?
これに関しては、雑誌「Cut」の2008年9月号と2009年12月号のインタビューで宮崎駿監督は、次のように語っています。
『ハウル』の場合はモチーフに魅力があり、同時にそれが罠だったんです。どんどん年寄りになっていくお客さんたちに「若返ることが素敵なことだ」って言えるのか。年をとってもイイジャンとか、若いことだけがいいんじゃないとか、やっぱやりたいじゃないですか。そこだけは曲げたくなかったらから話がややこしくなりました。
雑誌『Cut(2008年9月号と2009年12月号)』より引用(最終確認日:2023年9月7日)
上記の内容だけでは宮崎駿監督の気持ちを代弁しきれていないに違いありませんが、少なくとも「老い」に対する価値観に焦点が当てられているようです。
脈絡がなくとも、テーマを感じることは可能です。知らず知らずのうちにストーリーを論理的に理解したいという偏見が極端な評価が生まれた背景なのかもしれませんね。
見れば見るほど深い作品
『ハウルの動く城』は一度で物語を理解するのは難しいですが、だからこそ何度見ても面白い作品です。原作を読めば、よりストーリーを思い描けるようになるでしょうし、ピンポイントで「老い」について考えながら見るのもよいです。楽しみ方は無限大、それがエンターテイメントの魅力なはずです。
改めて、見れば見るほど味わい深い作品だと思います。なお、『ハウルの動く城』について理解を深めたい人たちは、岡田斗司夫さんの解説動画を見ることをおすすめします。YouTubeで検索してみましょう。
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