芸術家を目指す人たちのなかには、東京芸術大学を目指している人たちもいるはずです。他の大学と比べて、芸大受験は技術と感性が問われる異次元のテストです。東京芸術大学は芸大のトップに君臨する名門であり、浪人するのは当たり前と言われています。なかには、5浪、6浪して入学する人もいます。
そのため、なかには、「東京芸術大学は東大よりも難しい」という人たちもいるくらいです。実際のところ、どのような背景からそのような評価を下しているのでしょうか?
この記事では、東京芸術大学が東大より難しいと言われる理由を解説しています。また、気になる偏差値や倍率についてもまとめているので、芸大受験を考えている人たちは参考にしてみてください。
東京芸術大学が東大より難しいと言われる理由4選
そもそも、東京芸術大学と東大は受験方式が違うだけではなく、目指す人たちの性質も異なります。そのため、難しさを単純に比較できません。それにもかかわらず、一部の人たちは、「東京芸術大学が東大よりも難しい」と評価しています。ここでは、その理由を4つに視点から解説していきます。
理由1 芸術系の実技試験には正解がない
第1に、東京芸術大学の入試で実施される実技試験は正解のない試験であるため、東大よりも難しいと考える人たちがいます。
実技試験は美術学部と音楽学部の両方で実施される試験ですが、国語や数学などの学科試験と異なり正解が存在しません。東京芸術大学の入試情報サイトには、一部の学科の過去問題と出題意図が掲載されているのですが、問題の正解が掲載されておらず実技試験の評価基準も公表されていません。
すなわち、自分の実力やセンスを表現し、試験監督の脳裏に残るような個性を出せるかどうかで結果が決まるわけです。その一方で、東大の試験には正解が存在します。だからこそ、正解のない東京芸術大学の試験のほうが難しいと評価する人たちもいるわけです。
理由2 技術を磨く事前投資が必要になる
第2に、東京芸術大学に合格するには芸術にまつわる技術を事前に磨く必要があるため、知識や思考を重視する東大の試験よりも難しいと捉える人たちもいます。
例えば、美術学部であれば高校時代から美術予備校に通い、基本的な技術から専攻科目の技術までを徹底的に身につけます。また、音楽学部は美術学部とは異なり、幼少期からピアノや楽器を学び始める必要があり、人前での発表にも慣れていなければなりません。
どちらの場合も一般的なスクールではなく、東京芸術大学に合格できるレベルの技術を教えられる有能な指導者の元で技術を磨く必要があります。例外はありますが、高校3年間だけでは足りないくらいの積み重ねが求められるのです。
そして、頭脳以外にも感性をフルに使って対策しなければいけないため、東大よりもハードルが高いと感じる人たちもいるわけです。
理由3 将来的なリスクが高い
第3に、東京芸術大学を卒業しても必ずしもプロの芸術家として生きていけないため、東大よりも将来的なリスクが高く、本気で目指すなら覚悟が必要です。
芸術は金銭に還元しづらい価値であり、「職業」に当てはまるようなものばかりではありません。また、音楽部は本場であるヨーロッパへ留学したり、大学院でさらに技術をつけたりしますが、プロの演奏家や楽団員になる道は厳しいと言われています。
音楽学部と美術学部どちらの学部でも、名前が残るような芸術家になれるのはほんの一握りです。芸術家としての保証がない将来を目指すのはリスクが高いため、大学生活の学びで得たものをもとにして自分の道を切り開いていく強さ、自分を信じる精神力が必要になるでしょう。
理由4 努力だけではどうにもならない
第4に、美術や音楽は地道な努力を積み重ねるだけでは才能を開花させられない場合があるため、東大よりも難しいと考える人たちもいます。
もちろん、頭脳もまた遺伝や家庭環境など、努力だけではどうにもならない可能性があります。しかし、貧しい過程から東大合格を勝ち取った人たちは過去にいくらでも存在ます。一方、芸大受験は生まれ持った才能やセンスがどうしても問われてしまいます。
学術の様に努力して知識を身につけるのではなく才能やセンスで勝負しなければならない世界では、事前の努力と同じくらい、感性を解放するインパクト性と、それを表現する器用さが必要になるのです。
東京芸術大学の偏差値・倍率・現役合格率
東京芸術大学が難しい理由を紹介してきましたが、次に東京芸術大学の基本入試情報である偏差値と倍率、現役合格率を詳しく解説していきます。まず、東京芸術大学の共通テスト得点率と偏差値は下記の表の通りです。
区分 | 共通テスト得点率 | 偏差値 |
美術学部 | 51~89% | 65.0 |
音楽学部 | 55~80% | 57.5 |
学科試験の偏差値は決して低くありません。美術学部では芸術学科の89%、音楽学部では音楽学部の80%が各学部で1番高い共通テスト得点率となっています。先に述べたように東京芸術大学の入試は実技試験を重視していますが、学科試験もしっかりとした対策が必要です。
次に、令和5年度一般入試の学部別志願者状況は下記の通りとなっています。
区分 | 募集人数 | 志願者数 | 倍率 |
美術学部 | 234人 | 2861人 | 12.2% |
音楽学部 | 237人 | 781人 | 3.3% |
合計 | 471人 | 3642人 | 7.7% |
入試倍率は他の国立大学と比べると高くなっており、特に美術学部の絵画科は18.1倍、音楽学部の音楽環境創造科は6.6倍と激しい競争となっています。
次に、令和4年度の入学者年齢からみた現役合格率は下記の通りです。
18歳を現役合格者として合格率を出しています。
区分 | 18歳 | 19歳 | 20歳 | 21歳以上 |
美術学部 | 17.5% | 33.5% | 24.7% | 24.3% |
音楽学部 | 70.1% | 19.9% | 0.41% | 0.58% |
合計 | 44.2% | 26.5% | 14.3% | 15.0% |
現役合格率は美術学部で非常に低くなっており、音楽学部では高い結果が出ています。美術学部は2浪3浪を覚悟の上で入試に望まなければなりません。
東大も難しい
東京芸術大学が芸術の最高峰だとしたら、東大は学術で最高峰の大学です。共通テスト得点率はどの入試も85%以上で偏差値は67.5、理科三類はもっとも偏差値が高く72.5となっているため、東大は言わずと知れた国内最高峰の難関大学です。そのため、難しくないわけがないのです。
東大の入試に合格するためには、中高校生時代から勉強する習慣をつけ、たくさんの知識を蓄えておく必要があるのは言うまでもありません。
しかし、東大の入試は東京芸術大学の実技試験と異なり正解が存在します。正解を目指して努力する点では明確なゴールが見えているため、東京芸術大学よりも精神的な負担は少ないかもしれません。
芸大と東大は比較できない
東京芸術大学が東大より難しいと言われる4つの理由と入試情報について解説してきました。東京芸術大学と東大は受験生が目指している領域が異なるため、入試難易度の比較は簡単にできません。
東京芸術大学は芸術の才能を持ち、有能な講師のもとで鍛錬を積んだ人が入学できる大学であり、東大はコツコツと積み重ねてきた努力により得た知識で勝負に挑む大学です。どちらの大学もそれぞれの道を極めようとする志が高い人のみが入学を許可されるのです。
受験を控えている皆さんに今回の記事が少しでも参考になれば幸いです。
コメント