ジブリ『君たちはどう生きるか』が気持ち悪いのはなぜ?【ネタバレ注意】

ジブリ『君たちはどう生きるか』が気持ち悪いのはなぜ?【ネタバレ注意】

宮崎駿監督が手がけるジブリ映画『君たちはどう生きるか』は2023年7月14日から全国放映されています。みなさんのなかにも、ジブリの作品が大好きで既に視聴した人たちもいるでしょう。これまでに発表されてきたジブリ映画のタイトルとは違って、問いかけ形式になっているのも気になりますよね。

ところが、実際に映画を見た人たちのなかには、「気持ちが悪かった」という感想を抱く方もいるようです。一体、その背景にはどのような理由があるのでしょうか?

この記事では、「ジブリ『君たちはどう生きるか』が気持ち悪いと言われるのはなぜなのか?」という疑問について考察しています。既に作品を見ている人やこれから映画を見ようと検討している人たちは参考にしてみてください。一部ネタバレも含まれるのでまだ見ていない人は注意してくださいね。

目次

ジブリ映画『君たちはどう生きるか』とは?

スタジオジブリ公式HP『君たちはどう生きるか』より引用(最終確認日:2024年3月4日)

『君たちはどう生きるか』は宮崎駿監督が制作したジブリ映画の最新作です。2023年7月14日から公開されており、既に興行収入は100億円を突破したと言われています。北米では、過去に公開されたジブリ作品の中で最高記録を叩き出しており、注目の作品となりました。

面白いことに、日本国内ではCM広告などの宣伝は一切行われずに、作品が公開されることだけが発表されていました。謎の包まれた新作に対して多くの人たちが期待感を持っていたのは確かです。実際に、日本でも公開4日目で130万人を超える動員数を叩き出しました。

過去のタイトルとは異なり、「君たちはどう生きるか?」と問われているような感覚を持つ本作品は国内のアニメーションに大きな爪痕を残しています。

『君たちはどう生きるか』が気持ち悪いと言われるのはなぜ?

しかしながら、映画を視聴した人たちのなかには、『君たちはどう生きるか』に対して「気持ち悪い」という感想を持った人たちもいるようです。

ジブリ作品は宮崎監督の世界観を反映したこどもから大人まで楽しめる作品であるものの、人によってはネガティブな評価を下す人もいます。

それもまたひとつの解釈ですから決して悪い感想ではありません。年齢に応じてもまた感じ方が異なるでしょう。とはいえ、「気持ち悪い」という意見が生まれるのなぜなのでしょうか?

ここでは、X(旧Twitter)に投稿されている視聴者の感想を3つの視点からまとめていきます。

理由1 父親の再婚が受け入れられない

理由1 父親の再婚が受け入れられない
スタジオジブリ公式HP『君たちはどう生きるか』より引用(最終確認日:2024年3月4日)

第1に、主人公の父親「勝一」は亡くなった妻の久子と瓜二つである妹の夏子と再婚したことに対して「後妻に妹を選ぶなんて気持ち悪い」という感想を抱いた人たちがいます

たしかに、現代人の恋愛感覚ではあり得ない選択肢ですよね。自由恋愛は個人と個人の強い関係性を起点に成立しますから、夫婦のいずれかが死んだ後でも後妻や後夫を迎えることは裏切り行為のように感じるのも無理はありません。ましてや、兄弟や姉妹に手を出すなんて考えただけでもおぞましいですよね。

けれども、昔の結婚観から言えば、決しておかしな話ではありません。今とは違って、個人の意思ではなく、家柄や伝統という一族の習わしを重視していた時代は戦死した夫の弟を新しい旦那にしたり、病死した妻の姉と結婚したりすることは珍しいことではなかったのです。「順縁婚」とも呼ばれています。

順縁婚の目的は、夫婦のいずれかが亡くなったことで壊れる家族の財産を守ることにあります。勝一と夏子の関係もまた、そのような事情があったと推察されます。しかしながら、現代人とは全く異なる結婚観から生じる違和感が気持ち悪さに繋がったと考えられます。

理由2 夏子の振る舞いが怖い

理由2 夏子の振る舞いが怖い
スタジオジブリ公式HP『君たちはどう生きるか』より引用(最終確認日:2024年3月4日)

第1に、夏子の振る舞いに対して気持ち悪さを覚える人たちもいるようです

具体的には、夏子が眞人に妊娠中の腹を無理やりに触らせるシーンを見ていて、ゾッとしたという感想があります。その他にも、少々自己顕示欲求が強いと感じられる振る舞い方が見受けられますよね。

実際、映画の冒頭で登場する夏子の風貌からどこかしら闇を感じます。この背景には、亡くなった久子との関係性から生じる「怨嫉」があったと推察されます。いわゆる、双子あるあるなのですが、自分と瓜二つの人間なのに相手が優れていると劣等感が刺激されて、存在を脅かされることがあるのです。

なお、夏子の人間性に関する深い考察についてもっと知りたい人は、以下の記事をおすすめします。

理由3 映像がおぞましい

理由3 映像がおぞましい
スタジオジブリ公式HP『君たちはどう生きるか』より引用(最終確認日:2024年3月4日)

第3に、『君たちはどう生きるか』は宮崎駿監督の生々しすぎる世界観が映像として見事に反映されている作品なので、作画に耐えられないという人たちもいたようです

ジブリ映画では、生命の神秘さとリアルさがむき出しになって表現されることがあります。本作品でも、思わず目を背けたくなるようなシーンがいくつも登場するため、感受性が強すぎる人たちは見てられないという感想を抱いたわけです。

例えば、大量のカエルがまとわりついたり、インコが人肉を食べようと狂い乱れたりするシーンは、驚愕ものです。これは、宮崎監督の表現力が極まっていることを意味しています。すなわち、狂気が存在するわけです。

しかし、どの作品も国民的に愛されるものを作るのですから、そこには同時に親やすさがあります。これぞアニメーションと言えるでしょう。

時代と人間性のギャップが違和感を生み出す

本作品は私たちが生きている時代とは異なります。特に、結婚観として当たり前化している価値観は今と全く違うのです。おそらく、当時の人たちも複雑な心境だったに違いありませんが、今のような自由恋愛の延長として結婚があったわけではありません。

また、人間のおぞましい感情は環境次第でだれにでも生まれるものですが、いざそれを直視すると恐ろしい気持ちになりますよね。しかし、人間には光と影があることを忘れてはいけません。人間性は常に一定ではなく、巡りめく変化のなかで変容していきます。

きっと、夏子のような複雑な心境に共感した人たちもいるはずです。ジブリが単なる物語を超えて、人間の心理に深く爪痕を残すのは、二律背反の光と影を描き出しているとも言えます。それが子どもから大人までを巻き込む力の根源になっているのかもしれません。

「気持ち悪さ」は必ずしも悪いことを意味しません。むしろ、気持ち悪いと感じさせる力の根底には何があるのか。それを今一度、自分の価値観から見直してみたときに大きな気づきを得られるかもしれません。是非とも、そうした観点から本作品を視聴してみると見方が変わって面白いと感じるはずです。

ジブリ『君たちはどう生きるか』が気持ち悪いのはなぜ?【ネタバレ注意】

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