カラオケは一大エンターテイメント産業です。みなさんのなかにも、飲み会の二次会や部活の打ち上げで利用したことのある人たちいるはずです。なかには、週一で通っているガチ勢もいるでしょう。いずれにしても、カラオケは私たちにとって感性を解放する身近なエンターテイメントであることに違いはありません。
けれども、「カラオケ」という言葉の語源や事業の始まりについては意外にも知られていません。この記事では、カラオケの正式名称について解説しています。また、気になる発祥や昔のカラオケボックスについても紹介しているので、カラオケの成り立ちに興味のある人たちは参照してみてください。
カラオケの正式名称は?
一般的に、カラオケの正式名称は「空のオーケストラ」と言われています。元々はラジオ放送や音楽の業界で頻繁に使われていた用語で、ミュージシャンが歌うときにオーケストラによる生演奏ではなく、伴奏を録音したテープを空っぽのオーケストラ、略して「カラオケ」と呼んでいたようです。
なお、老舗ジャーナリストの前川洋一郎氏によれば、「カラオケ」という言葉それ自体が誕生した背景には、宝塚歌劇団の楽団員によるストライキがあると説明しています。
カラオケは造語で、語源は「宝塚歌劇団」と関係がある。1956年、宝塚歌劇団の楽団員のストライキであわや公演中止という時に、劇団側から頼まれた松下電器が演奏のテープと機器を提供し、公演を実施できたが、オーケストラボックスは空っぽ。即ちカラのオケボックスだった。
ニッポンドットコム『世界的な娯楽となったカラオケの進化の歴史とポストコロナ』より引用(最終確認日:2023年3月3日)
今では当たり前のようにスマホで音楽を聴いているわけですが、昔は専ら人の演奏に依存していたのです。その意味では、カラオケという言葉が生まれた背景には、録音技術が発展したことによって、「生演奏」以外の手段で音源を確保できるようになった技術革新があると言えるでしょう。
カラオケの発祥は?
実のところ、カラオケの発祥は日本です。
1960年代後半、当時のカセットテーププレーヤーにマイクを接続して、オリジナルの楽曲に合わせて歌う機械をスナックに置いたことがカラオケの起源であると言われています。
その後、1970年代の初頭には、軽音楽のBGMを再生する機械として使用されていたコインボックス内臓の「8トラック式小型ジュークボックス」にマイク端子が付き、日電工業の社長・根岸重一氏が軽音楽テープ等を使って歌うサービスを提案するなど、現代のカラオケに近い利用方法が誕生しました。
その翌年、アメリカの『TIME』誌に「20世紀にもっとも影響力があったアジア人」として紹介されたこともあるクレセントの創業者・井上大佑氏がスプリングエコーとコインタイマー内蔵のマイク端子付き8トラックプレーヤーを何と手作りで制作しました。
そして、弾き語りで録音した伴奏テープ(40曲)をセットにして、スナックを中心にレンタルサービスを提供し始めたのです。兵庫県神戸市を皮切りにして、スナックの主要顧客層であるおじさん世代から親しまれるようになり、全国へと広がっていったのです。
どうやら、当時は素人で人前で歌うなんてことは常識的にも考えられなかったようです。けれども、お酒の席ということもあって、他人に歌声を披露する敷居が下がり、その何とも言えない心地よさが受けて、1973年には、新しいビジネスとして注目されるようになったのです。
なお、カラオケの歴史について詳細を知りたい人たちは、一般社団法人全国カラオケ事業者協会が作成する「カラオケ歴史年表」を確認することを推奨します。
昔のカラオケボックスはこんな感じだった
カラオケ事業が誕生した当時、アーリーアダプターはスナック通いのおじさん世代でした。酒の席での遊びとして利用されるのがデフォルトだったわけです。
しかし、1985年に船舶用コンテナを改造した屋外型の「カラオケボックス」が発明されたことがきっかけに、若者たちにもカラオケが浸透し始めました。「スナック」という空間から解放されたことで全国各地の繁華街から商業地まで、さまざまな場所でカラオケが楽しめるようになり、マーケットが飛躍的に拡大したのです。
なお、昔のカラオケボックスは次のような様相でした。
なんだか隠れ家みたいで楽しそうですよね。もしかしたら、当時の若者たちにとって、他人に見られることなく、友達や恋人と一緒に集まってワイワイ騒げる場所はあまりなかったのかもしれません。コンテナという密室な空間だからこそ、仲間内で楽しめるコミュニケーションがあったのでしょう。
カラオケ産業は生まれ変わろうとしている
新型コロナウィルスの感染拡大をきっかけに、カラオケ産業は大きく生まれ変わろうとしています。従来では、歌うことを楽しむエンターテイメント空間だったサービスがWEB会議や映画鑑賞など多目的な用途を積極的に解放しており、一人でも活用できる自由空間になっているのです。
Switchやスマホアプリで自宅カラオケがしやすい環境が整い始めているからこそ、店舗方のカラオケ産業も新規の取り組みが必要です。すなわち、お店ではないと楽しめない価値にフォーカスした利用方法を見出す必要があるわけです。今後も日本発祥のカラオケ産業の行方を見放せません。
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